規模により回復状況が異なる企業収益 [経済]
景気の回復状況は、企業の規模によって異なっているように感じられています。
実際、財務省の「法人企業統計調査」の数値を追ってみると、
その傾向が顕著に表れています。
ここでは、企業の規模を以下のように4段階に定義して分析してみたいと思います。
大 企 業:資本金10億円以上
中堅企業:資本金1億~10億円
中小企業:資本金1千万~1億円
零細企業:資本金1千万円未満
従業員(役員を含む)の給与については、
大企業の中でも製造業において回復が見られますが、
同じ大企業でも非製造業では減少が続いています。
中堅企業では、製造業は横ばいですが、非製造業では減少しています。
中小企業、零細企業では、業種を問わず給与は減少しています。
以上から、給与に関しては大企業の製造業の一人勝ちと言うことができそうです。
表:従業員一人当たり人件費(給与)の推移(百万円)
注:人件費(給与)は、「役員給与」「従業員給与」「福利厚生費」の合計で算出した。
また従業員数は「期中平均役員数」と「期中平均従業員数」の合計である。
出所:財務省「法人企業統計調査」(http://www.mof.go.jp/1c002.htm)
次に、従業員一人当たりの営業利益について見てみましょう。
大企業・中堅企業においては、製造業・非製造業ともに上昇しています。
大企業の製造業を除き、従業員の給与は横ばいないし減少していますので、
企業の利益は上昇していても、従業員の給与には景気回復が反映されていないことになります。
中小企業においては、一人当たり営業利益は製造業において若干回復していますが、
非製造業では減少しています。
零細企業にいたっては、近年において一人当たり営業利益がプラスとなっていますが、
年による変動が極めて大きくなっています。
表:従業員一人当たり営業利益の推移(百万円)
出所:同上
以下の図は、2005年における企業規模別・産業別一人当たり人件費(給与)と
一人当たり営業利益を比較したものです。
企業規模によって給与も営業利益にも大きな違いがあり、
また製造業の方が非製造業よりも数値が上回っていることがわかります。
図:企業規模別従業員一人当たり人件費(給与)(2005年)
出所:同上
図:企業規模別従業員一人当たり営業利益(2005年)
出所:同上
不況からの回復過程において、
しわ寄せがより企業規模の小さな企業(いわゆる下請け企業)に集まっており、
大企業だけが一人勝ちする形での景気回復となっているようです。