文春新書編集部編『論争 格差社会』(文春新書) [書籍紹介]
格差の問題については数多くの書籍や論文、雑誌記事などが公表されています。
筆者の立ち位置により、論考のスタンスはそれぞれであるため、
読者としてはどの論文が正しいのか、わかりづらいのが現状だと思います。
また、「格差」の問題が政治的に、あるいはメディア的に取り上げられるときには、
自分に都合の良いスタンスを取る論考だけが意図的に採用され、
その他の議論はあたかも「なかった」かのように、取り上げられていません。
本書は、スタンスの異なる12本の論文・対談を新書にとりまとめるという、
斬新なスタイルを取っています。
書き下ろしではありませんが、これまで格差社会問題に一石を投じてきた研究者の
論文が数多く所収されているとともに、異なる媒体で公表されたものを
あらためて1冊の本にまとめ上げ、格差社会論争に関する判断を読者にゆだねるという、
野心的な取り組みを行っています。
格差問題を探求するにあたって、とても手軽な入門書だと思われます。
文春新書編集部編『論争 格差社会』(文春新書)2006年8月20日発行、750円+税