労働分配率悪化を通じた景気回復 [労働・賃金]
2006年に入って、景気が上向いているといわれています。大手企業を中心に業績が向上し、
有効求人倍率も改善してきています。
その一方で、労働者にとって「景気が良くなった」という実感はまだまだ持てていないようです。
ここで、「労働分配率」という考え方を見てみましょう。かなり大胆に定義すれば、
企業があげた収益のうち、労働者に賃金等で分配する部分がどの程度あるか、ということです。
労働分配率の計算には、利用する統計によっていくつかの方法が存在しますが、
ここではもっとも活用しやすい内閣府の『国民経済計算』の数値を用いて
労働分配率の時系列推移を見てみましょう。
国民所得(要素費用表示)は、
雇用者報酬+財産所得+企業所得
と定義されます。
このうち、財産所得は利子や配当によるものなので、ここでの議論からは除外し、
(雇用者報酬)÷(雇用者報酬+企業所得)
を労働分配率と定義します。
この数値を時系列で確認してみると、
近年、一貫して労働分配率が減少していることがわかります。
図:国民経済計算を基にした労働分配率の推移
出所:内閣府『国民経済計算』より作成
一般に、景気が悪いときには企業は内部留保を少なくするため労働分配率が上昇し、
景気回復局面では内部留保を手厚くするため労働分配率が低下するといわれています。
しかし、日本経済が長く不況にあった時期にほぼ一貫して労働分配率が低下トレンドにある中で、
景気が回復してきたとしても、それは企業部門の改善であって、労働者に対して賃金という形で
十分な還元がなされていないというのが、
一般国民の景況感につながっているのではないかと思われます。