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蔵書の多い家庭の児童・生徒は学力も高い [教育]

2006年10月4日の記事
図書館の利用状況から見る日本人の読書傾向 」で指摘いたしましたが、
世界的に見ても日本人の読書量は少ないようです。
また最近では、家庭に本が多くある子どもとそうでない子どもの間で、
学力に違いがあることが指摘されています。

IEA(国際教育到達度評価学会)による
「国際数学・理科教育動向調査2003年調査」(TIMSS 2003)によると、
家庭の蔵書数と理科の点数には相関が見られることがわかりました。

日本のデータを見ると、家庭の蔵書数が200冊以上の児童・生徒と
ほとんどない児童・生徒の間では、国際平均点を500点としたときに、
小学校4年で50点強、中学校2年では60点以上の違いが発生しています。

図:TIMSS 2003における、家庭の蔵書数別理科の平均点(日本)

出所:国立教育政策研究所編『TIMSS 2003 理科教育の国際比較 国際数学・理科教育
    動向調査の2003年調査報告書』ぎょうせい


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いじめによる児童・生徒の自殺 [教育]

教師のいじめを発端とする中学生の自殺問題が大きな波紋を呼んでいます。
文部科学省も、本格的な調査に乗り出しているようです。

学校におけるいじめの発生件数について、正式な統計は公立学校についてのものしかありません。
最近の傾向としては、発生学校数・発生件数ともに、小中学校では減少の傾向にあるものの、
高等学校においてはやや増加の傾向が見られます。

表:いじめの発生学校数と発生件数の推移(公立学校)

出所:文部科学省「生徒指導上の諸問題の現状について(概要)」(平成18年9月13日公表)

図:いじめの発生学校数の推移(公立学校)

出所:同上

図:いじめの発生件数の推移(公立学校)

出所:同上

発生学校数で見ると、小学校では10校に1校
中学校・高等学校では3校に1校の割合でいじめが発生しているとのことですが、
これはかなり過小評価された数値ではないかというところが実感ではないかと思われます。
表面化していない(届け出られていない)いじめが数多く存在しているようです。

図:いじめの発生率(平成17年度、公立学校)

出所:同上

図:1校あたりいじめの発生件数(平成17年度、公立学校)

出所:同上

なお、今回のいじめ事件で自殺した生徒は中学2年生でしたが、
いじめは中学校に入ると急激に増加することが統計からも確認されています。
この時期は、勉強が急に厳しくなったり、
部活動を通じた生徒間のコミュニケーションが拡大することなど、環境が大きく変わるともあり、
その環境変化についていけない子どもたちがいじめの対象となってしまう可能性が高くなっているようです。

図:学年別いじめの発生件数(平成17年度、公立学校)

出所:同上

1000人あたりのいじめの発生件数は、全国で1.6件ですが、
都道府県別に見ると、全国平均を上回っている15県、
うち愛知県と千葉県は全国平均の2倍以上の発生率となっています。

表:都道府県別いじめの発生件数(平成17年度、公立学校)

出所:同上

一方、文部科学省の同じ調査によると、公立学校における児童・生徒の自殺者数は、
近年緩やかに減少しているものの、平成17年度においても105人存在しており、
自殺者については小学生よりも中学生、中学生よりも高校生の方が多くなっています。

表:公立学校の自殺者数の推移

出所:同上

ちなみに、警察庁生活安全局地域課が公表している
「平成17年中における自殺の概要資料」(平成18年6月)によると、
平成17年(文部省統計は年度であることに注意)の小中高校生の自殺者数は、
小学生7人、中学生66人、高校生215人の合計288人となっています。

表:警察庁発表による小中高校生の自殺者数の推移

出所:警察庁「平成17年中における自殺の概要資料」他各年版

「年(1月~12月)」と「年度(4月~翌年3月)」の違いはありますが、
中学生、高校生について、公立学校の自殺者数が正しいとすると、
私立学校の中学生、高校生の方が公立学校の生徒よりも2~3倍の自殺者数ということになります。
文部科学省「学校基本調査」によると、
平成17年5月1日現在の中学校、高等学校の生徒数のうち、
私立学校在学生は、中学校で6.7%、高等学校で29.6%となっています。
公立学校に比べて私立学校に通う生徒の数がこれだけ少ない中で、
自殺者数だけ飛び抜けて多いということには大きな疑問があります)

参考表:国公立・私立別児童・生徒数(平成17年5月1日現在)

出所:文部科学省「学校基本調査(平成17年度)」

公立学校の自殺の原因別状況からは、かなりショッキングな結果が明らかとなっています。
平成16年度、17年度において、「いじめ」「教師のしっ責」を理由とした自殺者は、
小学校、中学校、高等学校においてもいずれも「ゼロ」であるということです。
自殺の理由として上位に上がっているのは、「厭世」「精神障害」「父母等のしっ責」ですが、
「その他」の中に全体の6割ほどが分類されてしまっているため、
正確な自殺原因の特定がなされていないというのが現状ではないかと思われます。
(「その他」の中には複合的な要因が含まれているのかもしれませんが、
自殺の「きっかけ」「最終的に自殺を後押しした要因」として
しっかりと分類を行う必要があるはずです)。

表:自殺の原因別状況(平成17年度、公立学校)

出所:文部科学省「生徒指導上の諸問題の現状について(概要)」

学校運営者としては、いじめの問題、児童・生徒の自殺の問題は、
口をふさぎたくなる事件であると思われますが、悲惨な事件を繰り返さないためにも、
正確な要因分析と対処方法の確立が重要になっています。


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表面化する指導力不足教員 [教育]

2005年に放映されて話題となった学校ドラマ「女王の教室」でも取り上げられた
「指導力不足教員」が、全国で表面化しています。
文部科学省「公立学校教職員の人事行政の状況調査について」によると、
各都道府県・政令指定都市では、指導力不足教員に関する人事管理システム」を導入し、
指導力に問題のある教員の認定を行い、研修の受講を命じています。

都道府県・政令指定都市によって評価システムの導入時期に違いがあるため、
単純に数値の時系列比較を行うことはできませんが、
ほぼ全ての都道府県・政令指定都市においてシステムが導入された平成17年時点では、
全国で506人の教員が指導力不足と認定されました。

表:地域別指導力不足教員認定者数(人)


注:  は平成15年4月1日までに、  は平成16年4月1日までに、
    は平成17年4月1日までに、  は平成18年4月1日までに
  指導力不足教員に関する人事管理システムを導入した都道府県・政令指定都市。
  堺市は平成18年度中に導入予定。
出所:文部科学省「公立学校教職員の人事行政の状況調査について」各年版より作成

指導力不足を認定された教員の全てが研修を受けて職場復帰するわけではなく、
退職する教員も最近では年間100人以上存在し、高止まりを見せています。

図:指導力不足教員のうち退職等した者の推移(人)

出所:同上


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図書館の利用状況から見る日本人の読書傾向 [教育]

日本人、特に若者の活字離れが進んでいると言われています。
日本には2,900を超える図書館が存在していますが、
人口10万人当たり図書館数は主要国の中で最も少なくなっています。
年間の一人当たり貸出点数(総貸出点数を人口で除したもの)も5冊弱と、
必ずしも多くありません。

文部科学省『平成17年度社会教育調査中間報告』によると、
平成16年の一人当たり年間貸出冊数は4.5冊ですが、小学生の貸出冊数が18.7冊となっており、
大人は必ずしも図書館を利用していないことがうかがえます。

表:主要国における図書館利用状況

注:文部科学省『社会教育調査』の数値とは異なる。
出所:日本図書館協会等調べ
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/18/04/06032701/007/001.htm

OECD(経済協力開発機構)「生徒の学習到達度調査(PISA)」において、
読解力に関して2000年、2003年の調査でいずれも第一位であったフィンランドでは、
一人当たり貸出冊数が19.2冊と突出して多くなっているのが特徴的です。
(日本はPISA調査において、読解力については2000年に8位だったのが、
2003年には14位に後退しています)

読書離れにどのように歯止めをかけるのか、
様々なアイデアを出していかなければならないようです。


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中途退職していく教師たち [教育]

学校の崩壊が各方面から伝えられています。
授業に集中できない子どもたちが増え、教員の苦労は並大抵のものではないと思います。

そうした環境の中、中途退職していく教員の数が増えています。
文部科学省が3年に1度実施している「学校教員統計調査」によると、
「定年」「病気」「死亡」といった理由以外で離職する小学校教員の数が近年増加しています。
平成10年及び平成13年の調査では、「転職のため」「大学等入学のため」「その他」を理由とする
離職教員数は3,000人強でしたが、平成16年調査時には、その数が3割近く増加して、
3,851人となりました。

図:離職理由別離職教員数の推移(小学校)

注:「定年(勧奨)のため」「病気のため」「死亡」を除いた数値。
出所:文部科学省「学校教員統計調査」各年版より作成。

こうした理由で離職する教員を年齢別に見てみると、
40歳未満の比較的若い教員の離職は必ずしも大きく増加しているわけではなく、
40歳以上60歳未満の中堅以上の教員の離職が拡大していることがわかります。

図:年齢別離職教員数の推移(小学校)

注:「定年(勧奨)のため」「病気のため」「死亡」を除いた数値。
出所:同上

英語やコンピュータ教育の導入に伴う教育内容の大きな変化、
いじめをはじめとする学級崩壊に対して体力的に対処が困難な教員が
次々と離職していると考えられます。
こうした状況が続くと、子どもの教育環境の水準低下につながる恐れもあり、
迅速な対応が望まれます。


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小学校における英語教育インフラ [教育]

英語が国際語として重要視されています。
日本においても、小学校から英語教育を開始することが期待されていますが、
果たして小学校において英語教育を行う環境は整っているのでしょうか。

文部科学省『平成16年度学校教員統計調査』によると、
小学校教員の中で、中学校の英語教員資格保有者は、わずか3.7%となっています。
これは、国公立・私立ともに、大きな違いはありません。

図:小学校教員の中学校英語教員資格保有者割合(%)

出所:文部科学省『平成16年度学校教員統計調査』

また、英語の教員資格保有者は、比較的中堅以上の先生たちが保有している傾向にあり、
40歳未満の若い小学校の先生は、全英語教員資格保有者の26.7%に過ぎないのが現状です。

図:小学校教員のうち、中学校英語教員資格保有者の年齢別構成比

出所:同上

現在、小学校での英語教育には英語ネイティブの補助教員を配置することが想定されていますが、
優秀な補助教員は引き抜き合戦になることが予想されます。
小学校教員の英語教育資格について、きちんと手を打っておく必要がありそうです。


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中学校では1クラスに1人が不登校(文部科学省『平成18年度 学校基本調査』) [教育]

8月10日、文部科学省より『平成18年度 学校基本調査』が公表されました。
この中から、興味深いデータをご紹介します。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/06080115/index.htm

1年間に30日以上の長期欠席(病気、経済的理由、不登校、その他)をしている
全国の児童・生徒は、
 小学校で59,052人、
 中学校で128,562人
となっています。そのうち、不登校
 小学校で22,709人、
 中学校で99,546人と、
全児童・生徒数に占める比率はそれぞれ0.32%、2.75%となっています。

中学校の2.75%という数値は、36人に一人の割合で不登校ということで、
各クラスに1人の割合で不登校生徒が存在する、ということができます。

表:小中学校における不登校児童・生徒数

出所:文部科学省『平成18年度 学校基本調査』より作成

不登校生徒数の多い中学校についてみてみると、
平成13年に不登校生徒数が112,211と最大になり、不登校比率も2.81%となりました。
その後、不登校生徒数自体は減少に転じ、不登校比率もわずかに低下していますが、
少子化の影響もあり、不登校比率は平成17年に再び2.75%に微増しています。

図:中学校における不登校生徒数・不登校比率の推移

出所:文部科学省『平成18年度 学校基本調査』より作成

ちなみに、「経済的理由」で長期欠席している児童・生徒は、
 小学校で79人、
 中学校で210人となっています。
全国で300人弱とはいえ、平均して各都道府県に6人強。決して無視できる数字ではありません。

その他、興味深いデータとして、短大・大学進学率は52.3%と過去最高を記録しました。
うち大学進学率は45.5%でこれも過去最高です。
また、大学院在学者数は前年度から6,558人増加して261,038人となり、
これも過去最高となっています。

少子化の影響で高等教育機関の競争率が低下し、またよりよい就職を目指して
高等教育を受ける若者が増えていることがこうした動きの背景にあるようです。
これまで高等教育を受けた人は国民の一部と考えられてきましたが、
すでに現在では高等教育を受けた人が半数を超え、
高等教育を受けた人と受けなかった人(受けられなかった人)の
就職や給与での格差が国民を二分する時代に入ってきたと言うこともできそうです。


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